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広島地方裁判所 平成7年(わ)378号 判決 1996年2月20日

本店の所在地

広島県福山市沖野上町四丁目一七番二〇号

法人の名称

有限会社クリモト乳業

代表者の住居

広島県福山市沖野上町四丁目一七番二〇号

代表者の氏名

栗本義人

本籍

広島県福山市桜馬場町二九番地の二

住居

同県同市沖野上町四丁目一七番二〇号

会社役員

栗本義人

昭和二〇年一月二七日生

右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官古川忠雄出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社クリモト乳業を罰金一五〇〇万円に、同栗本義人を懲役一年に処する。

被告人栗本義人に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社クリモト乳業は、広島県福山市沖野上町四丁目一七番二〇号に本店を置き、乳製品の販売等を目的とする資本金三〇〇万円の有限会社であり、被告人栗本義人は、同会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人栗本義人は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、同会社の本店の収入の一部並びに同会社広島営業所の収入全部及び支出の一部を公表帳簿に計上せずに別途管理する等の不正な方法により所得を秘匿した上

第一  平成二年九月一日から同三年八月三一日までの事業年度における同会社の所得金額が、実際には四五六九万四九〇七円あったにもかかわらず、同三年一〇月三一日、同市三吉町四丁目四番八号所在の所轄福山税務署において、同税務署長に対し、同事業年度における所得金額が四一六万二九八八円であり、これに対する法人税額が一〇八万八一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の同事業年度における正規の法人税額一六二九万八〇〇〇円と右申告税額との差額一五二〇万九九〇〇円を免れ

第二  同三年九月一日から同四年八月三一日までの事業年度における同会社の所得金額が、実際には四八四四万一六四六円あったにもかかわらず、同四年一〇月三〇日、前記福山税務署において、同税務署長に対し、同事業年度における所得金額が一八万五一四〇円であり、これに対する法人税額が二万八四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の同事業年度における正規の法人税額一七三八万二〇〇〇円と右申告税額との差額一七三五万三六〇〇円を免れ

第三  同四年九月一日から同五年八月三一日までの事業年度における同会社の所得金額が、実際には四六〇二万九七三三円あったにもかかわらず、同五年一〇月二九日、前記福山税務署において、同税務署長に対し、同事業年度における所得金額が一七万七二七六円であり、これに対する法人税額が四万四八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同会社の同事業年度における正規の法人税額一六四九万六一〇〇円と右申告税額との差額一六四五万一三〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人栗本義人の当公判廷における供述

一  被告人栗本義人の検察官に対する供述調書

一  被告人栗本義人の大蔵事務官に対する質問てん末書一四通

一  栗本豊子の検察官に対する供述調書

一  栗本豊子の大蔵事務官に対する質問てん末書一六通

一  大蔵事務官作成の売上高調査書、期首たな卸高調査書、商品仕入高調査書、期末たな卸高調査書、販売員給与調査書、広告宣伝費調査書、地代家賃調査書、修繕費調査書、通信交通費調査書、水道光熱費調査書、保険料調査書、備品・消耗品費調査書、厚生費調査書、車輛用燃料費調査書、支払手数料調査書、雑費調査書、雑収入調査書、貸倒損失調査書、受取利息割引料調査書及び事業税認定損調査書

一  検察事務官作成の平成七年七月一一日付け電話聴取書

(法令の適用)

被告人栗本義人の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、同被告人の右各所為は被告人有限会社クリモト乳業の業務に関してなされたものであるから、同会社については、いずれも同法一六四条一項、一五九条一項に該当するところ、以上はいずれも平成七年法律第九一号による改正前の刑法(以下「刑法」という。)四五条前段の併合罪であるから、被告人栗本義人については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年に処し、被告人有限会社クリモト乳業については、同法四八条二項により、法人税法一五九条一項所定の罰金額を合算した金額の範囲内で被告会社を罰金一五〇〇万円に処し、被告人栗本義人については情状により刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、三期にわたる合計四九〇一万四八〇〇円にも上る法人税のほ脱事犯であり、その金額は多額であり、ほ脱税率も三期平均約九七・七パーセントと高率であるなど、その犯罪結果は重大である。

また、犯行態様も、被告会社の広島営業所については、これを設立した当初から脱税の意図はなかったにしろ、同営業所の収入にかかる取引事実をまったく公表帳簿に計上せずにいたなどというものであるから、これまた悪質であり、税政に対する国民の信頼を失わせ、一般予防の見地からして軽視し難いものがある。

しかしながら、被告人栗本義人及び被告会社の経理担当者であったその妻においては、本件発覚以降、国税局による調査に積極的に協力するとともに、本件について深く反省しており、二度と脱税行為をしないと誓っていること、既に、脱税額は本税、消費税共に重加算税、延滞税を含めて完納され、法人県民税、法人事業税等を合算すれば、脱税額の約四倍にあたる約二億円の諸税等が納付されていること、被告人栗本義人にはこれまで罰金前科一件以外の前科はないこと等の諸事情を総合勘案して、主文のとおり量刑した。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 池本寿美子)

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